Vercelで安全なリリースを! カナリアデプロイメントを徹底解説

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目次

1. カナリアデプロイメントとは?

カナリアデプロイメント(Canary Deployment)とは、新しいバージョンのソフトウェアやアプリケーションを、一部のユーザーに対してのみ公開するデプロイメント手法です。炭鉱で働く人が、有毒ガスを検知するためにカナリアを連れて行ったことに由来します。もしカナリアが倒れたら、ガス漏れが発生していると判断できるため、危険を回避できます。

1.1 なぜカナリアデプロイメントが必要なのか?

従来のデプロイメント方法では、新しいバージョンをすべてのユーザーに一斉に公開するため、もし問題が発生した場合、影響範囲が非常に大きくなってしまいます。カナリアデプロイメントでは、少数のユーザーでテストを行うことで、問題の影響を最小限に抑えられます。

1.2 カナリアデプロイメントのメリット

  • リスクの軽減: 新しいバージョンに問題があっても、影響を受けるユーザーは限定的です。
  • 早期フィードバック: 実際のユーザーからのフィードバックを早期に収集し、改善に役立てることができます。
  • パフォーマンスの検証: 本番環境に近い状態で、新しいバージョンのパフォーマンスを検証できます。
  • 段階的なリリース: 問題がなければ、徐々に公開範囲を拡大していくことができます。

2. Vercelでのカナリアデプロイメント実装

2.1 Vercelとは?

Vercelは、フロントエンド開発に特化したクラウドプラットフォームです。Next.jsなどのフレームワークとの相性が良く、高速なデプロイメントと自動スケーリングを提供します。

2.2 Vercelでカナリアデプロイメントを行う方法

Vercelでは、主に以下の2つの方法でカナリアデプロイメントを実現できます。

  1. Gitブランチを利用した方法
  2. Vercel Split Testingを利用した方法

2.2.1 Gitブランチを利用したカナリアデプロイメント

この方法は、Gitのブランチ機能を活用します。

  1. 新しいブランチを作成: 新機能を実装したブランチ(例: feature/new-feature)を作成します。
  2. Vercelにデプロイ: そのブランチをVercelにデプロイします。Vercelは、ブランチ名に基づいてプレビューURLを生成します(例: feature-new-feature.your-project.vercel.app)。
  3. トラフィックのルーティング: Vercelのダッシュボードで、本番環境(mainブランチなど)へのトラフィックの一部を、新しいブランチにルーティングします。例えば、10%のユーザーを新しいブランチに誘導します。
// vercel.json (設定例)
{
  "routes": [
    {
      "src": "/(.*)",
      "dest": "/(.*)",
      "middleware": "middleware.ts" // ミドルウェアでトラフィックを制御
    }
  ]
}
// middleware.ts (ミドルウェア例)
import { NextRequest, NextResponse } from 'next/server';

export function middleware(req: NextRequest) {
  const url = req.nextUrl.clone();
  const featureBranch = 'feature-new-feature'; // 新機能ブランチ名

  // ランダムな確率で新機能ブランチにリダイレクト
  if (Math.random() < 0.1) { // 10%の確率
    url.hostname = `${featureBranch}.your-project.vercel.app`;
    return NextResponse.rewrite(url);
  }

  return NextResponse.next();
}

解説:

  • vercel.jsonで、すべてのリクエストをmiddleware.tsにルーティングします。
  • middleware.tsでは、ランダムな確率(この例では10%)で、リクエストを新機能ブランチのURLにリダイレクトします。
  • your-projectの部分は、ご自身のVercelプロジェクト名に置き換えてください。

2.2.2 Vercel Split Testingを利用したカナリアデプロイメント

Vercel Split Testingは、より高度なカナリアデプロイメントを可能にする機能です。

  1. 実験の作成: Vercelのダッシュボードで、Split Testingの実験を作成します。
  2. バリアントの定義: 本番環境(A)と新機能ブランチ(B)をバリアントとして定義します。
  3. トラフィックの配分: 各バリアントへのトラフィックの配分を設定します。例えば、Aに90%、Bに10%のトラフィックを割り当てます。
  4. メトリクスの設定: コンバージョン率やエラー率など、評価に使用するメトリクスを設定します。
  5. 結果の分析: Vercelは、設定したメトリクスに基づいて、各バリアントのパフォーマンスを分析します。

Vercel Split Testingを使用すると、より詳細な分析に基づいて、リリース戦略を決定できます。

3. カナリアデプロイメントの注意点

3.1 テストの重要性

カナリアデプロイメントを行う前に、新しいバージョンに対して十分なテストを行うことが重要です。ユニットテスト、結合テスト、E2Eテストなど、様々なテストを実施し、潜在的な問題を洗い出しましょう。

3.2 ロールバック戦略

カナリアデプロイメント中に問題が発生した場合に備えて、迅速にロールバックできる体制を整えておくことが重要です。Vercelでは、以前のバージョンに簡単にロールバックできます。

4. まとめと次のステップ

この記事では、Vercelでのカナリアデプロイメントの実装方法について解説しました。

  • カナリアデプロイメントは、リスクを最小限に抑えながら新機能をリリースできる効果的な手法です。
  • Vercelでは、GitブランチやVercel Split Testingを利用して、カナリアデプロイメントを簡単に実装できます。
  • テストとロールバック戦略をしっかりと準備しておくことが重要です。

次のステップ:

  • Vercelのドキュメントを読んで、カナリアデプロイメントについてさらに詳しく学びましょう。
  • 実際にVercelでカナリアデプロイメントを試してみましょう。
  • Vercel Split Testingを活用して、より高度なリリース戦略を検討しましょう。